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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《血曼陀羅紙帳武士(ちまんだらしちょうぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 頁
と、左門は訓めるように云った。
「二人ながら紙帳を出るな! ……紙帳こそは拙者の家、わが城砦、この中にそちたちいる限りは、拙者身をもって護ってとらせる! 出たが最後、拙者関係らぬぞ!」
幾多の悲劇を経験した紙帳は、またも悲劇を見るのかというように、尚睨み合っている二人の女と、今や紙帳の裾に蹲居り、刀を例の逆ノ脇に構え、斬って出ずべき機会を窺い、戸外の物音を聞きすましている左門とを蔽うていた。頼母によって斬られた五郎蔵の乾児たちの血が、新しくかかって、古い血の痕の上を、そうして左右を、新規に深紅に染め、それが、線を為し、筋を為し、円を描き、方形を形成り、流れ凝り、紙帳の面貌は、いよいよ怪異を現わして来た。
が、紙帳の外は?
ここ紙帳の外は、修羅闘争の巷であった。
頼母は既に紙帳の側から離れ、ふたたび立ち木の幹へ背をあて、群がり寄せ、斬りかかろう斬りかかろうとする五郎蔵の乾児たちを睨み、自分もいつか受けた数ヵ所の負傷で、――斬った敵方の返り血で、全身朱に染まり、次第に迫る息を調え、だんだん衰える気力を励まし励まし、……
そういう頼母の眼に見えているのは、正面乾児たちの群の中に立ち、彼を睨んでいる松戸の五郎蔵の姿であった。