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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血曼陀羅紙帳武士(ちまんだらしちょうぶし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 頁

青空文庫

ならないのだから……)

頼母は、本名を宣ることにした。

「拙者ことは、伊東頼母と申し、隣りの部屋へ泊まり合わせたものでござる」

俄然騒動が起こった。

「おお頼母様でございますか! 妾はお浦でございます! ……部屋を取り違えて……」

という声が、紙帳の中から起こり、すぐに、女の立ち上がる影法師が、紙帳の面へ映った。が、それは一瞬間で、たちまち悲鳴が起こり、女の姿が仆れるのが見え、つづいて燈火が消え、部屋の闇の中に、ぼんやりと白く紙帳ばかりが残った。

しかし、やがて、紙帳の裾が、鉄漿をつけた口のようにワングリと開き、そこから、穴から出る爬虫類かのように、痩せた身長の高い武士が出て来た。刀をひっさげた左門であった。左門は、縁先まで一気に出、その気勢に圧せられ、後へ退り、抜き身を構えている頼母を睨んだが、

「貴殿が伊東頼母殿か、拙者は五味左門、巡り逢いたく思いながら、これまでは縁なくて逢いませなんだが、天運拙からず今宵逢い申したな。本懐! ……貴殿にとっては拙者は、父の敵でござろうが、拙者にとっても貴殿は、父の敵の嫡宗、恨みがござる! 果たし合いましょうぞ!」