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こうじん

行人

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《行人(こうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 224,801 字 · 452 頁

青空文庫

自分は俥の上で指を折って勘定して見た。岡田がいなくなったのは、ついこの間のようでも、もう五六年になる。彼の気にしていた頭も、この頃ではだいぶ危険に逼っているだろうと思って、その地の透いて見えるところを想像したりなどした。

岡田の髪の毛は想像した通り薄くなっていたが、住居は思ったよりもさっぱりした新しい普請であった。

「どうも上方流で余計な所に高塀なんか築き上て、陰気で困っちまいます。そのかわり二階はあります。ちょっと上って御覧なさい」と彼は云った。自分は何より先に友達の事が気になるので、こうこういう人からまだ何とも通知は来ないかと聞いた。岡田は不思議そうな顔をして、いいえと答えた。

二

自分は岡田に連れられて二階へ上って見た。当人が自慢するほどあって眺望はかなり好かったが、縁側のない座敷の窓へ日が遠慮なく照り返すので、暑さは一通りではなかった。床の間にかけてある軸物も反っくり返っていた。

「なに日が射すためじゃない。年が年中かけ通しだから、糊の具合でああなるんです」と岡田は真面目に弁解した。

「なるほど梅に鶯だ」と自分も云いたくなった。彼は世帯を持つ時の用意に、この幅を自分の父から貰って、大得意で自分の室へ持って来て見せたのである。