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こうじん
行人
線上閱讀夏目 漱石《行人(こうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 224,801 字 · 452 頁
自分は「そうか」と答えた。その調子が余り高いという訳なんだろう、三沢は団扇でぱっと自分の顔を煽いだ。そうして急に持ち交えた柄の方を前へ出して、自分達のいる室の筋向うを指した。
「あの室へ這入ったんだ。君の帰った後で」
三沢の室は廊下の突き当りで往来の方を向いていた。女の室は同じ廊下の角で、中庭の方から明りを取るようにできていた。暑いので両方共入り口は明けたまま、障子は取り払ってあったから、自分のいる所から、団扇の柄で指し示された部屋の入口は、四半分ほど斜めに見えた。しかしそこには女の寝ている床の裾が、画の模様のように三角に少し出ているだけであった。
自分はその蒲団の端を見つめてしばらく何も云わなかった。
「潰瘍の劇しいんだ。血を吐くんだ」と三沢がまた小さな声で告げた。自分はこの時彼が無理をやると潰瘍になる危険があるから入院したと説明して聞かせた事を思い出した。潰瘍という言葉はその折自分の頭に何らの印象も与えなかったが、今度は妙に恐ろしい響を伝えた。潰瘍の陰に、死という怖いものが潜んでいるかのように。
しばらくすると、女の部屋で微かにげえげえという声がした。