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せいりんず
西林図
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《西林図(せいりんず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,309 字 · 21 頁
というと、縁の端のほうへ行ってすねたようにあぐらをかいた。
冬亭の胡坐というのは、このながいつきあいの間にも、まだいちども見たことがなかった。めずらしいことをするものだと思って、ようすをうかがっていると、冬亭は縁無し眼鏡をチカチカさせながらこちらへむいて、いきなり、「馬鹿野郎」と一喝した。
冬月師の句会で、はじめて冬亭に逢ったとき、冬月師は、こちらは土井さん、大学で美学を講じていられる助教授でと紹介した。細っそりとした優おもてに、縁無しの眼鏡がよくうつり、美学の先生といっても、これ以上、美学の先生らしいのはちょっとあるまいと思った。日ごろは淑やかで、大きな声でものをいうためしもない冬亭にしては、ありそうにもないいきりかたで、冬木は呆気にとられて、笑ってしまった。
鶴鍋などというのは、冗談なのにちがいない。起居に音もたてないような冬亭に、鶴など殺せようはずがなく、それに冬亭と鹿島家との間には、むずかしい問題がいりくんでいて、むこうの庭へ入りこんで、乱暴なぞ働けない立場になっている。葱やビールまでさげて、鹿島の庭へ連れこもうというのには、なにかほかの目的があるのだと思うほかはない。