輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
おやはながめてかんがえている
親は眺めて考えている
金森 徳次郎
線上閱讀金森 徳次郎《親は眺めて考えている(おやはながめてかんがえている)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,403 字 · 29 頁
金銀や、珍本を埋めるためではない。博雄の旅行荷物を保全する為である。鍬を振りあげて、自分の老齢と非力を嘆じたわけだが、ともかく掘った。腕はしびれるように労れ、地に伏して休息した。隣家の庭の桧に火がついて、マッチをすったあとの軸木のように燃え果てる。
我家の雨戸も熱くなったと見え、火の子がいつまでもくいついている。もう駄目だ。町会長の責任もすんだ。博雄の行李を埋めた土の上に、更に土をかぶせ、水をかけ、万事終了の意識で心も軽く立ちあがった。ほんとうの学童疎開の日は、二三日さきのことだ。翌朝は遥々と、下北沢の親戚の家に厄介になりにいった。老母をリヤカーに乗せ、これを押しながら妻や子供は焼土の町を行く。これは先発隊である。
私は町会長の義務を果して、博雄と二人だけでさんたんたる町を行くと、天地の間、私とこの孤児と二人のみがいるような錯覚をおぼえた。事実一瞬にして、世は孤立人のみの世界に変じたのである。幸にしてこの父子あり、運がよければ、世界の再建に加工し得るかも知れないと、ひそかに思った。先発隊の運命の程もわからぬので、こんな弱気兼強気になったのである。