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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
線上閱讀萩原 朔太郎《詩の原理(しのげんり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 頁
然るに素質的な詩人でない人々は、こうした主観的態度でなく、他の客観によって事物を見るから、たとい形式に於て韻律の規約を蹈み、或は和歌や俳句の格調を借用しても、真の文学的な批判に於て詩と言い得ないものしか出来ない。
これによって吾人は、真に本質的に詩であるものと、形式のみの見かけの詩とを、判然として区別し得る。例えば、前の例に於て、ソクラテスの韻文やアリストテレスの韻文やは、真に心情から感動して、彼等がそれを書いたのでなく、純粋に客観的な態度に於て、認識を認識とし理智を理智として書いたのである。これに対してニイチェのツァラトストラは、哲学が主観の中に取り込まれ、認識が感情によって融かされている。故に後者は本質の詩であって、前者は形式だけの似而非詩である。しかしながらその場合にも、もしソクラテスが真にイソップ物語に感激し、それを主観の感情によって書いたならば、それは単に形式の韻文であるのみでなく、本質においても真の叙事詩で有り得たろう。アリストテレスの場合も同様であり、哲学が主観によって書かれたならば、ニイチェのそれと同じで有り得た。
前にあげた他の例、即ち鉄道唱歌や、地理諳記唱歌や、和歌俳句の形式による古来の処世訓、道徳訓の類も同じである。