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にんしきろんとしてのぶんげいがく

認識論としての文芸学

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《認識論としての文芸学(にんしきろんとしてのぶんげいがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,350 字 · 19 頁

青空文庫

処が之を文学と呼べという。そういう命名法は恐らく多分に不満を呼び起こすに相違ない。文学という言葉はなる程文芸という言葉に席を譲ってもよい。だがそれであるからと云って、文学を今云ったような文献学だとして了わねばならぬ理由は、まだない筈だ。――でそう考えて来ると、要するに「文学」とは、文芸創作を通じて受け取ることの出来る文芸のエスプリだ、ということにすれば、いいのである。之が文学という実際の用語を、最も親切に生かしたものとなるのではないかと思う。

だがそうすれば又、文学なる言葉を単に文芸という芸術の一種類・一領域・のエスプリだけに限定する必要もなかった筈だ。なぜなら、文芸に於て働くエスプリと云われるこの輪郭が空間的に限定され得ないような一種の気体は、一体美術や工芸や音楽に於けるエスプリと原則的に隔離出来るものだろうか。一切の芸術はその時代の精神を反映すると云われる。その時代の思想・文化・を表現すると云われる。このことは単に、同時代の諸芸術の間に社会的乃至歴史的な連関があって同じ傾向で貫かれている、というだけではない。諸芸術のエスプリそのもの・イデー自身・に共通なもののあることを指すのである。