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ちかいのまき

誓之巻

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《誓之巻(ちかいのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,856 字 · 16 頁

青空文庫

かかる夜を伽する身の、何とて二人の眠らるべき。此方もただ眠りたるまねするを、今は心安しとてやミリヤアドのやや時すぐれば、ソト顔を出だして、あたりをば見まわしつつ、いねがてに明を待つ優しき心づかい知りたれば、その夜もわざと眠るまねして、予は机にうつぶしぬ。

掻巻をば羽織らせ、毛布引かつぎて、高津は予が裾に背向けて、正しゅう坐るよう膝をまげて、横にまくらつけしが、二ツ三ツものいえりし間に、これは疲れて転寝せり。

何なりけむ。ものともなく膚あわだつに、ふと顔をあげたれば、ありあけ暗き室のなかにミリヤアドの双の眼、はきとあきて、わが方を見詰めいたり。

予が見て取りしを彼方にもしかと見き。ものいうごとき瞳の動き、引寄するように思われたれば、掻巻刎ねのけて立ちて、進み寄りぬ。

近よれという色見ゆ。

やがてその前に予は手をつきぬ。あまり気高かりし状に恐しき感ありき。

「高津さん。」

「少し休みましたようです。」

「そう。」

とばかりいきをつきぬ。やや久しゅうして、

「上杉さん、あなたどうします。」

予は思わずわななきぬ。

「何を、ミリヤアド。」

「私なくなりますと、あなたどうします。