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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,416 字 · 53 頁
約四半刻、去定は容赦のない口ぶりで、壱岐守を威しつけた。聞いている登も、途中で威しだと気づいたが、それにしても、食事の制限のきびしさにはおどろいた。飯が麦七米三、鳥や卵を禁ずることは接待で聞いたが、壱岐守を前にして用人に繰り返すのを聞くと、その量と内容とは、極貧者の食事にも劣るものであった。白い革袋のように肥えふくれた壱岐守の顔には、表情らしい動きは殆んど見られなかったが、その小さな細い眼だけには、怯えた幼児のような怖れと、悲しそうな色があらわれていた。
「貧しい人間が病気にかかるのは、大部分が食事の粗悪なためだ」接待へ戻ってから、去定は登にそう云った、「金持や大名が病むのは、たいてい美味の過食ときまっている、世の中に貪食で身を亡ぼすほどあさましいことはない、あの恰好を見るとおれは胸が悪くなる」そして唾でも吐きそうな顔をした。
用人の岩橋隼人が金を持って来ると、去定は薬を調合すると云って、薬籠をとりよせた。そして用人が去ると、小粒の十両の中から二両だけ紙に包み、これを持ってむじな長屋へいけと、登に云った。
「おれは黄鶴堂へ寄って、それから廻るところがある」