輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

かけこみうったえ

走れメロス

太宰 治

線上閱讀太宰 治《走れメロス(かけこみうったえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,745 字 · 112 頁

青空文庫

私は、迎えに来ていたHと二人で自動車に乗った。

一箇月振りで逢ったわけだが、二人とも、黙っていた。自動車が走り出して、しばらくしてからHが口を開いた。

「もう薬は、やめるんだね」怒っている口調であった。

「僕は、これから信じないんだ」私は病院で覚えて来た唯一の事を言った。

「そう」現実家のHは、私の言葉を何か金銭的な意味に解したらしく、深く首肯いて、「人は、あてになりませんよ」

「おまえの事も信じないんだよ」

Hは気まずそうな顔をした。

船橋の家は、私の入院中に廃止せられて、Hは杉並区・天沼三丁目のアパートの一室に住んでいた。私は、そこに落ちついた。二つの雑誌社から、原稿の注文が来ていた。すぐに、その退院の夜から、私は書きはじめた。二つの小説を書き上げ、その原稿料を持って、熱海に出かけ、一箇月間、節度も無く酒を飲んだ。この後どうしていいか、わからなかった。長兄からは、もう三年間、月々の生活費をもらえる事になっていたが、入院前の山ほどの負債は、そのままに残っていた。熱海で、いい小説を書き、それで出来たお金でもって、目前の最も気がかりな負債だけでも返そうという計画も、私には在ったのであるが、小説を書くどころか、私は自分の周囲の荒涼に堪えかねて、ただ、酒を飲んでばかりいた。