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えちごのふゆ

越後の冬

小川 未明

線上閱讀小川 未明《越後の冬(えちごのふゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,272 字 · 15 頁

青空文庫

まだ新しいものは字も鮮かに読まれて、「遭難者の墓」と、別に名の分ろう筈がなければ、ただこう書いてあった。他に、卒塔婆や青笹などが処々に建てられていて、その赤く枯れた笹に当時結び付けられた白紙や、赤い紙などが淋しげに風に動いていた。太吉はその墓場で休んだ。

白い徳利の欠けや、石地蔵の頭なども落ちている。暫らく、石の上に腰を下していた。此処からよく海が見える。海は真黒だ。空は暗い。空の暗いのよりも海の色が黒い。彼は偶然この黒い海の中に怖ろしい鰐や、鱶鮫が棲んでいるのだと思った。

「お母――どうさしたろう。」

こう力なく言って、太吉はまた当もなくとぼとぼと歩き出した。

直江津と高田との間は二里余りある。直江津は北に、高田は南になっている。

日が全く暮れてしまった。太吉は疲れた足を引摺りながら、とぼとぼと昔の今町街道(直江津から高田へ行く道)を歩いて来た。北風が強いので、雲が払い去られて星が出た。空は海のように青かった。星の光りは凍るように冴えた。宛然金銀、水晶、瑪瑙を砕いたようであった。太吉は踏切番の小舎の前まで来ると、この汽車道に添いて行けば早く高田へ着くと考えた。