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しゅみのいでん
趣味の遺伝
線上閱讀夏目 漱石《趣味の遺伝(しゅみのいでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,235 字 · 77 頁
真面目に読んでるものは極めて少ないのだから、ひねくっていると云うのが適当だろう。
約束をした人はなかなか来ん。少々退屈になったから、少し外へ出て見ようかと室の戸口をまたぐ途端に、背広を着た髯のある男が擦れ違いながら「もう直です二時四十五分ですから」と云った。時計を見ると二時三十分だ、もう十五分すれば凱旋の将士が見られる。こんな機会は容易にない、ついでだからと云っては失礼かも知れんが実際余のように図書館以外の空気をあまり吸った事のない人間はわざわざ歓迎のために新橋までくる折もあるまい、ちょうど幸だ見て行こうと了見を定めた。
室を出て見ると場内もまた往来のように行列を作って、中にはわざわざ見物に来た西洋人も交っている。西洋人ですらくるくらいなら帝国臣民たる吾輩は無論歓迎しなくてはならん、万歳の一つくらいは義務にも申して行こうとようやくの事で行列の中へ割り込んだ。
「あなたも御親戚を御迎いに御出になったので……」
「ええ。どうも気が急くものですから、つい昼飯を食わずに来て、……もう二時間半ばかり待ちます」と腹は減ってもなかなか元気である。ところへ三十前後の婦人が来て