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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
線上閱讀谷 譲次《踊る地平線(上)(おどるちへいせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 168,926 字 · 332 頁
丘のような荷馬車が、その車体よりも大きな箱を積んで私の絵へはいって来た。荷物のうえで、四、五人の労働者がびしょ濡れのまま笑っているのが見える。ちょうど絵のまん中で、御者は肺いっぱいに雨を飲みながら欠伸をして行った。彼女の窓には巡査と犬と子供がいる。巡査は巡査らしく立ちどまってあたりを睥睨し、犬は鎖を張って子供を引いて去った。光る雨ならまだしも五月のにおいを運んで、そこに植物の歓声も沸けば、しずかな詩のこころも見出されようというものだが、これは夜もひるもない暗い騒がしい雨なのだ。朝となく夕方となくろんどんを包む湿気の連続なのだ。よし一しきり雨がやんで、白い日光がぼんやりと落ちてくることがあっても、それはまた直ぐ水の線に変って、太陽よりもっと平均に隈なくそそぐであろう。傘とレイン・コウトの倫敦に名物の薄明が覆いかぶさる。夜に入って一そうの雨だ。
すると、ちょうど前の往来に立っている古風な街灯のひかりが流れこんで、雨の真夜中でも新聞の見出しが読めるほど部屋はあかるかった。私たちの間借りしているパアム街一〇九番の三階建の家は、完全におなじ建築と外観の住宅が何哩も何哩も、ほとんど地球のそとにまでつづいているように思われる。