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どうとくのかんねん

道徳の観念

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁

青空文庫

処が例えばこの夫々の種が神の造り与え給うたものであるが故にとか、イヴの腹に初めから仕込まれてあった限られた一定の数のものであるが故にとかいう理由で、種の不変性を主張するならば、その時この種は何等か絶対的な権威をもったもの、真に絶対的なもの、となる。之を実証的に覆した進化論も、この絶対的権威を覆したと考えられる限りに於て、初めて批難や賞讃の対象となるのだ。――つまり道徳の問題となる時初めて、不変者は真の意味での絶対者となる。神聖にして不可侵なもの、批評を加えるべからざるもの、となるのだ。

だから道徳の不変性という観念は、単なる不変性の観念ではなくて、神聖な絶対者、批判すべからざる不可侵物、という観念なのである。事物の不変性は価値評価の世界では事物の神聖味となって現われる。道徳はそれ自身価値ではなく、却って道徳的価値対立(普通之を善悪と呼んでいる)を強調によって成り立たせる或る領域か或いは領域以上のものであることを述べたが、にも拘らず之は道徳が要するに価値的なものであることを云い表わしているのであった。この価値の世界に横たわる処の道徳の不変性を主張するということが、その神聖な絶対性を主張するということになるのは、当然なことだ。