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どうとくのかんねん

道徳の観念

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁

青空文庫

と云うのは批評批判する場合の尺度そのものが、他ならぬこの道徳なのであるから、布地で物指を測ることが無意味なように、道徳を批判することは意味がないのだ、とも考えられる。

なる程事物を価値評価するものがこの道徳である以上、道徳自身を以て道徳を批判するとでも考えない限り、道徳の批判は不可能な筈だ。処でこの神聖な道徳を神聖な道徳自身で批判することは、神聖不可侵な王様が自分を束縛する法律を発布するようなもので、不可能なことか八百長か、のどっちかだ。――でこういうわけで、常識が道徳を不変なものと考えたがることには、表面的に考えて気付かないような深刻な内容があるのである。

だが云うまでもなく道徳は不変ではない。それは歴史の教える処だし、現今の未開人の道徳と吾々やヨーロッパ人の道徳とを較べて見れば判ることだ。そして更に、今日の道徳は何と云っても徹底的に批判されねばならぬ理由が存する。なぜなら今日の既成道徳――ブルジョア的及び半封建的道徳――の殆んど凡ては、吾々勤労者の階級から見れば明白に吾々人間の解放の妨害者以外の何ものでもないからなのである。併しでは、この道徳は如何にして何に基いて、批判され得るのか。