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どうとくのかんねん

道徳の観念

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《道徳の観念(どうとくのかんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,388 字 · 140 頁

青空文庫

理論的な分析を放擲するということが、子供が一切の問題を善いか悪いかに還元する所以なのであり、そして夫が同時に、この「善い悪い」自身が常識によって問題にされ得ない所以なのだ。「善い悪い」は善いか悪いかを問う限り、もう問題は残っていないのが当然だ。常識による道徳(夫はその建前から云って不変で絶対で神聖不可侵なものだ)とは、科学の反対物を意味するための言葉だ。

そこでこの道徳の批判、道徳のこの常識的観念の批判、つまり道徳の不変性乃至絶対神聖性の打倒、の唯一の武器、唯一の立脚点、唯一の尺度は、科学でなくてはならぬ、という結論になるのである。俗間常識による道徳なるものは、単にそれが必要であるとか有用であるとか、又吾々人間社会の習慣や伝統であるとかいう、事実の認識だけでは不充分なのであって、そうした科学的な説明を含んだ一個の事実である以上に、特別な意味での価値を持っていなければならず、その価値のおかげでこの科学的な規定が殆んど完全に蔽い尽されて全く別な相貌を呈していなければ承知しない。科学からは全く異った別なこの相貌が道徳のもつ神秘性なのだ。で道徳は専ら神秘性の主体として、社会人相互の間に受け渡され流通するものである。