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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

「そう云えば、本当に来ているんだろうね?」

と云った。

「一向音沙汰がないけれども――」

「大丈夫でしょう、ここの大使館の増永修三ってひとが、連絡してくれることになっているから。着いてからのホテルのことや何かも、父は直接そちらにたのんでいるし」

「増永って――増永謹の息子ででもあるのかい?」

佐々泰造の同時代人で、増永謹は有名な銀行家だった。

「そうよ。こっちへはもう三四年いるんじゃないかしら。大した秀才なんですって……」

素子がまたふらりと自分の室へもどって行って、まだ下手なタイプライターの音をさせはじめたとき、廊下をこっちへ近づいて来る男の靴音がした。どこかのドアのところで止るだろうと思ってきいていた靴音は、そのまま隣りも通りすぎようとしているので、伸子は、いそいで寝台からおりて、自分の室の開け放されているドアをしめようとした。そこであやうく、鉢合わせしそうに顔を合わせたのは、磯崎恭介だった。

「あら! あなただったの!」

その声で、向いの室から素子も顔を出した。

「めずらしいじゃありませんか」

磯崎がガリックへ伸子たちを訪問に来たのははじめてなのだった。