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どうひょう

道標

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁

青空文庫

素子をかえりみた。

「なにさ」

「わたしたちがハルビンへついたとき、もうロシア暮しに馴れるんだというわけで、『黄金の角』へとまったんです。あすこは日本語も英語も通じないのね。おひるになったんで御飯たべようとすると、いまはまだ食堂があいていません、というんで、高価いスペシアルを部屋へとったの。七時頃、夕飯をたのむと、またそういうの。あれで二日ばかり、随分へんな御飯たべたわね」

「ああ、ロシアだけでしょうからね、正餐が三時から五時だなんていう習慣のところは――」

秋山がそういうのを、瀬川が、

「そりゃ吉見さんにも似合わないぬかりかたでしたね」

と笑った。

「小説にだって正餐の時間はよく出て来るじゃないですか」

「――そこが、赤毛布の悲しさ、ですよ。あなたがただって、人知れず、似たようなことやって来たんじゃないんですか」

「わたしは大丈夫でしたよ」

妙に含蓄のある調子で瀬川が力説したので、みんな笑い出した。

「ハルビンに、またどうしてそんなに滞在されたんです」

「猿の毛皮を買わなけりゃならなかったんですもの」

「猿の毛皮?」

「外套のうらにつける」

その猿の毛皮について、伸子はいくらか悄気ていた。