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どうひょう
道標
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《道標(どうひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 頁
丁度そのとき、アパルトマンの廊下で電話のベルが鳴った。
電話は素子からだった。
「いやにおそいからどっかへ行っているのかと思った――どうした?」
「ちょっと――いろいろあるもんだから」
感情のわだかまりから急にぬけ出せない伸子の声は、うっかりして沈鬱だった。
「――相変らずなんだなア」
素子は、電話口で考えていたが、
「迎えに行こうか」
その思いつきに弾んだ調子だった。
「迎えに行けば、いくら何でも放免だろう」
「じゃ、そうして。来るときね、あのクリーム色の小さい鞄に、部屋着と顔を洗う道具を入れて来て――二人分――いい?」
あんまりおそくなるようだったら、ヴォージラールまでかえらずに、いっそここのブルヴァールのはずれで街路樹のかげに一つ小さいホテルがある、そこへでも泊って見るのもいい。伸子は、いくらか重苦しい雲にきれめの見えた思いで客室へ戻って来た。泰造がひとりで肱かけ椅子に残っていた。
「お母様は?」
「よこにでもなったんだろう。しばらくそのままにしておけ」
泰造は、拇指と小指とで、両方のこめかみのところを揉むようにしているのだった。
「頭痛がなさるの?」
「頭痛というほどじゃないが」