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とおのへ

遠野へ

水野 葉舟

線上閱讀水野 葉舟《遠野へ(とおのへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,903 字 · 117 頁

青空文庫

「出すかね。」と、イムバネスが我物顔に声をかけた。馭者はそれには答えずに、

「出んじょ!」とあとの馬車に声をかけると、ピシリと馬の尻を打った。ガタリと大きく揺れると、悪いぬかるみのなかを駆け出した。私達は急にからだの均衡をうしなう程だった。

六

白々と薄日の射した空の下を、馬車は慌てたように駆けて行く。M村を離れると、道はしだいに山の裾に向っていた。

馬車が動き出すとやがて、なかでは膝を譲りやって、座が落ちついた。誰とも顔を見合わせるが、私は打解けて話そうとせぬ。すると、インバネスが、松蘿を持った二人に、

「今日は馬車が、込みまっしろうが?」と聞いた。

「めずらしく乗る人が多かったとかで、昨夜申込んだ人だけしか乗せぬと言っていました。」と、その一人が答えた。

「それでも、私等はここではどんな無理を言うても、乗せてくれるのさ。今日なども、私等のために乗せられなかった人があったろう。」イムバネスは得意らしく言った。

私はその言葉を聞くと不快を感じた。土地の人の専横な行為が、勝手を知らぬ旅人に、こうして、不便な目に逢わせるのか、と思って、その男の顔を見据えた。