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のろまにんぎょう

野呂松人形

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《野呂松人形(のろまにんぎょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,229 字 · 7 頁

青空文庫

やがて、大名が、「まず、与六を呼び出して申しつけよう。やいやい与六あるか。」とか何とか云うと、「へえ」と答えながらもう一人、黒い紗で顔を隠した人が、太郎冠者のような人形を持って、左の三色緞子の中から、出て来た。これは、茶色の半上下に、無腰と云う着附けである。

すると、大名の人形が、左手を小さ刀の柄にかけながら、右手の中啓で、与六をさしまねいで、こう云う事を云いつける。――「天下治まり、目出度い御代なれば、かなたこなたにて宝合せをせらるるところ、なんじの知る通り、それがし方には、いまだ誇るべき宝がないによって、汝都へ上り、世に稀なるところの宝が有らば求めて参れ。」与六「へえ」大名「急げ」「へえ」「ええ」「へえ」「ええ」「へえさてさて殿様には……」――それから与六の長い Soliloque が始まった。

人形の出来は、はなはだ、簡単である。第一、着附の下に、足と云うものがない。口が開いたり、目が動いたりする後世の人形に比べれば、格段な相違である。手の指を動かす事はあるが、それも滅多にやらない。するのは、ただ身ぶりである。体を前後にまげたり、手を左右に動かしたりする――それよりほかには、何もしない。