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かわぐちこ

野菊の墓他六篇

伊藤 左千夫

線上閱讀伊藤 左千夫《野菊の墓他六篇(かわぐちこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,105 字 · 61 頁

青空文庫

しかし食い込んでゆく補給に借りた金が容易に返せるはずのものでない。それは僕も知っておった。容易に返せないと知っておっても、借らねばならぬことになった。

そこであらたな苦しみをみずから求めることになった。何ほど親しい友人にでも、容易に返せないが金を貸せとはいえない。そういえば友人もおそらくは貸さない。つまるところはいつごろまでには返すからと友人をあざむくことになるのだ。友人をあざむく……道徳上の大罪を承知で犯すように余儀なくされた。友人の好意で一面の苦しみはやや軽くなったけれど精神上に受けた深い疵傷は長く自分を苦しめることになった。罪を知っているだけ苦痛は層一層苦痛だ。この苦痛からまぬがれたいばかりでも、借りた金はいっときも早く返したい。寝る目のねざめにも、ああ返したいと心が叫んでいるのだ。

恐るべきものではないか、一度金を借りたとなると、友人はもはや今までの友人でなくなる。友人の関係と債主との関係と妙に混交して、以前のようなへだてなく無造作な親しみはいつのまにか消えてゆく。こういう場合の苦痛はだれに話して聞かせようもない。

自分はどこまでも友人の好意に対し善意と礼儀とを失なわないようにつとめる。