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のはぎ
野萩
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《野萩(のはぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,480 字 · 21 頁
「来るひとも来るひとだけど、出すひとも出すひとだわ。たいへんだったでしょう、マルセーユなんかじゃ、どうだったの」
「べつに、なんでもなかった」
「なんでもないことはなかったでしょう。でも、よく気がついて、あたしのところへ電報をうったわね」
「なんの電報?」
「あなたがマルセーユから電報をくだすったから、こうして白耳義からお出迎いに罷りでたんじゃないの」
「それは、あたしじゃない。滋さんの所書きを出るとき忘れてきたもんだから、打ちたいにも打ちようがなかった」
「でも、あなたのほかに、誰が電報を打つというの」
安もへんだと思ったか、解けきらない顔で、
「マルセーユじゃ、ちっとも心細い思いなんかしなかったのよ。税関がすんだので、なんとかいう旅行社のひとに、駅まで送ってもらうつもりにしていると、どこかの奥さまが寄っていらして、お一人で日本から? よくまあねえ。さぞ、たいへんでしたでしょう。駅でしたら、あたくしがお送りいたしましょう。ちょうど車を持っておりますからって」
「それは、いい都合だったのね」
「三十七八の、すっきりした、なんともいえない容子のいい方なの。まだ時間があるからとおっしゃって、なんという通なの、明石町の船澗のあたりにそっくりな河岸のレストランで、見事な海老や生海丹なんかご馳走してくだすって、それから……」