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きんろう
金狼
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《金狼(きんろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 89,438 字 · 179 頁
「どうするんだい? あたしを殺るつもり? 見そこなうナイ、般若!」
乾は鶴のほうへは眼もくれずに、奥の棚の上にあるラジオのところへゆくと、それをいっぱいにあけた。東家三楽の浪花節が、耳も痺れるほどがんがんと鳴りだした。
そうしておいて、乾はのっそりと鶴のほうへ近づいて行った。二人は鶏でも追いこむような恰好に両手をひろげ、左右から鶴をじりじりと壁のほうへ追いつめて行った。
どこかで虫が鳴いている。
だいぶ更けたらしく、あたりはしんとしずまりかえっていた。うす暗い電気の下で、乾とハナがせっせと床をこすっていた。蘇芳をまきちらしたようなおびただしい血のあとを、たわしに灰をつけて、ひっそりと洗いつづけるのだった……
ちょうどその頃、葵は監房の窓から秋の夜空を眺めていた。
葵はたったいま調室からかえされたところだった。久我はもう死んでしまった。かくすこともおそれることもない。訊問されるままに、あたしに〈遺産相続〉を通知したのは久我の声でした。と自白した。自分が大名華族の和泉家の長女であることも自発的に申したてた。
久我はもう空にのぼって、あたしを見つめていてくれるのであろう。