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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,957 字 · 31 頁

青空文庫

庄太郎の親方の、瓦長、瓦師長五郎と、二、三人の弟子だ。うしろから、用人らしい老人の侍が割り込んで来ようとしていた。

呑みかけの茶碗をほうり出して、惣平次は、突っ立った。おこうも、上り框へいざり出て、

「何でござります、何事が起りました。」

長五郎は、鉢巻を脱って、ぐいと額の汗を拭いながら、やっと、声を調えた。

「何とも、誰の粗相でもねえんで――運でごわす。」

惣平次夫婦は、唾を飲んで、奇妙に無関心に、黙っていた。

弟子の一人が、興奮した声だ。

「おらあ見ていたんだが、足が辷って、真っ逆さまに落ちたもんだ。下にまた、間の悪いことにゃあ、こんなでっけえ飛石が――。」

おこうの眼が、一時に上吊った。

「あの、庄公が――庄太が――!」

「お気の毒で――、」長五郎は、ぴょこりと頭を下げた。「何と言ったらいいか、挨拶が出ねえ――。」

膝が折れて、惣平次は、がたがたと、そこの履物を掴んだ。

押し退けて、駈け出そうとした。

長五郎の背後から出て来た侍が、前に立った。

「察する、が、取り乱してはならぬ。これ、取り乱してはならぬ!」

「大怪我、大怪我、でござりますか、庄公は。」