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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,547 字 · 27 頁
鬼というくらいだから、その稼業も人柄もおよそは推量がつこうというもの。草加屋は実に非道を極めた、貧乏人泣かせの高息の金貸しであった。二両三両、五両十両といたるところへ親切ごかしに貸しつけておいては、割高の利息を貪る。これが草加屋の遣口だった。貸す時の地蔵顔に取り立てる時の閻魔面、一朱一分でも草加屋に廻してもらったが最後、働き人なら爪を擦り切らしても追いつかないし、商人は夜逃げかぶらんこがとどの結着。まったく、鬼草に痛めつけられている借人は、この界隈だけでも生易しい数ではない、と言う人の噂。
「血も涙もねえ獣でさあ。あっしゃあいつか人助けのためにあの野郎を叩っ殺してやるんだ。いい功徳になるぜ。」
「あん畜生、生かしちゃおけねえ。」
「鬼の眼にも泪と申す。草加屋伊兵衛は鬼でもないわ。豚じゃ、豚じゃ、山吹色の豚じゃ。己れ、そのうち、伝家一刀の錆にしてくれる。」
「月のねえ夜もありやす。一つ器用にさばきやしょう。」
痩浪人、遊人、そんじょそこらの長屋の衆、口ぐちにささやき合うのが、早くから釘抜連の耳にもはいっていた。だから、もっともらしく顰めた伊兵衛の死顔を見た時、藤吉は、ははあ、とうとう誰かがやったな、という頭がぴいんと来て、格別おどろかなかったわけである。