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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《釘抜藤吉捕物覚書(くぎぬきとうきちとりものおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,598 字 · 26 頁

青空文庫

陽が水溜りに映えて、そのころから晴れになった。

三

ちょうど二月、守田座には本所の師匠の書卸し「船打込橋間白浪」がかかって、これから百余日も打ち通そうという大入続き。小団次の鋳掛松、菊次郎のお咲、梵字の真五郎と佐五兵衛の二役は関三十郎が買って出て、刀屋宗次郎は訥升、三津五郎の芸者お組がことの外の人気だった。

この舞台に端役ながらも綺麗首を見せていた上方下りの嵐翫之丞という女形、昨夜閉ねて座を出たきり今日の出幕になっても楽屋へ姿を見せないので、どうやら穴だけはちょっと埋めて間に合ったものの、納まりかねるのが親方の肚、なんでも木挽町の三、四丁目采女の馬場あたりに泊込みの家があるらしいというところから、下廻りや座方の衆がわいわい噪いで先刻もやたらにそこらを歩いていた――という彦兵衛の話。

早朝から道楽の紙屑拾いに出て行った藤吉部屋の二の乾児の葬式彦兵衛が、愛用の竹籠を背に諏訪因幡守様の屋敷前を馬場へかかると、路地や門口を面白ずくに歩き廻っている河原者らしい一隊に出逢った。後になり前になり、聞くともなしにしゃべり散らすのを聞いて行くと今いったような騒ぎ。