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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
それから、じつにおそろしいカブトムシの運動が、はじまりました。
頭にはえたおそろしい一本のツノ、ギクシャクした長い足、まっ黒な背中に白いどくろもようのある、巨大なカブトムシは、おそろしい早さで、部屋の中をかけまわりました。かけるにつれて、足のかんせつがギシギシとなり、ヌーッとのびた、まっ黒な長いツノが、なにかを、つき落とすように、クイクイと、あがったり、さがったりするのでした。
カブトムシのかけまわる早さは、ますますくわわってきました。今はじゅうたんの上を走るだけでなくて、安楽いすや、そこにあるテーブルの上にかけあがり、かけおりるのです。ちょうどいつかの夜、銀座の大通りで、自動車の車体をのりこして進んだのと、同じいきおいでした。
やがて、もっとおそろしいことが、おこりました。カブトムシは、部屋の壁を、よじのぼりはじめたのです。ほんとうのカブトムシは、壁でもてんじょうでも、自由にはいまわります。この人間カブトムシも、それと同じことをやろうというのです。
巨大な、まっ黒なからだが、ガリガリとおそろしい音をたてて、壁ぎわのたなをあしばにのぼりはじめました。