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てっとうのかいじん
鉄塔の怪人/海底の魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《鉄塔の怪人/海底の魔術師(てっとうのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 頁
また、さかなのようなしっぽも、ウロコが銀色にひかっているのではなくて、ワニのように、かたいいかめしいしっぽのようです。
一郎君は、人魚なんて、じっさいにあるものではないと信じていました。その、この世にいないはずの人魚が、しかも鉄のようにいかめしい人魚が、いま、目の下の岩の上に動いているのを見たのですから、じぶんの目を、うたがわないでいられません。頭がどうかしたのではないかと、おそろしくなってきました。
しかし、一郎君は勇気のある少年でした。おそろしいものを見たからといって、びっくりして、にげかえるような弱虫ではありません。にげるどころか、はんたいに、もっと近くから、あの怪物の姿をはっきり見きわめてやろうと決心したのです。
うらみちづたいに、岩山をかけおりて、海岸にあるトンネルのような岩のかげから、そっと怪物をのぞきました。怪物のこしかけている岩は、つい目のさき十メートルほどのところにあるのです。
もう太陽がすっかりしずんで、空はネズミ色に、海はどす黒くなっていました。岩のならんだ波うちぎわに、白い波がはげしくうちよせています。そこのひとつの岩の上に、黒い鉄のような生きものが、むこうをむいて、じっとしていました。