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はちのき
鉢の木
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《鉢の木(はちのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,534 字 · 28 頁
のは御勘気がゆりていないからに違いない、そうだとすれば押して駆けつけるのは主人の勘当をないがしろにすることだ、さむらいとして主人の御意志を無視することは道に外れる、それはますます不興を買うことになるだろう、四郎兵衛は生れて初めて神に祈った、――ああ弓矢八幡、しかしその甲斐はなかった、つい二十日ほどまえに徳川本軍が東へ進発したということがわかったのである、御旗もと本軍が発したとすれば、鳥居元忠が扈従していない筈はない、四郎兵衛はまったくうちのめされた、――やっぱりお赦しはないのか、このまま朽ちてしまえとのおぼしめしか。もはやなんの希望もない、なにもかも絶望である、この軍におくれるくらいなら、いっそ妹を手にかけて割腹すべきだ、この数日はそのことだけを思いくらしていたのであった。
「兄上さま……」萩尾に呼ばれて四郎兵衛はふとわれにかえった。いつか日は昏れかかって、廂をすべってくる光りも仄暗く、林のあたりで蜩の鳴くこえが悲しげに聞えていた、「もうお手もとが暗うございましょう、いま夕餉のおしたくを致しますから少しお休みあそばしましたら……」「うん休もう」