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どうせんかいじへん

銅銭会事変 短編

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《銅銭会事変 短編(どうせんかいじへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,745 字 · 216 頁

青空文庫

ギーと大門の開く音。と、また駕籠がゆっくりと動いた。がしかしすぐ止まる。

「ご苦労でござった」「遅くなりまして」「しからば乗り物をずっと奥まで」「よろしゅうござる」

というような、ひそひそ話が聞こえて来た。

突然駕籠が宙に浮いた。ゆらゆらと人の手で運ばれるらしい。畳ざわりの幽かな音。ス――と開けたりピシリと閉じる襖や障子の音もする。宏大な屋敷の模様である。トンと駕籠が下へ置かれた。紐や桐油を除ける音。それからピ――ンと錠の音がした。

「よろしゅうござるかな?」「逃げもしまい」「もし逃げたら?」「叩っ切るがよろしい!」

などと凄い話し声がする。と、ス――と扉があいた。

「いざ専斎殿お出くだされ」

「はっ」

と専斎は這い出した。朦朧と四辺は薄暗い。見霞むばかりの広い部屋で、真ん中に金屏風が立ててある。

その金屏風の裾の辺に一人の武士が坐っていたが、

「ここへ」と云って膝を叩いた。語音の様子では老人であったがスッポリ頭巾を冠っているので顔を見ることは出来なかった。鉄無地の衣裳に利休茶の十徳、小刀を前半に帯び端然と膝に手を置いている。肉体枯れて骨立っていたがそれがかえって脱俗して見え、云うに云われぬ威厳があった。