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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁
「今晩は」
両国の寅は、物馴れた静かさで、相手を驚かさないように声を掛けました。
「だれだえ」
狭くて浅いが、芸人らしく小綺麗に住んでいる家の次の間から、少しろれつの怪しくなった声が応えます。
「親方、大層なきげんだね。おれだよ」
寅がズイと入ると、境の障子は女手でスウと開いて、
「おや、これは、寅吉親分」
灯りへ透し加減に、五郎八は如才なく受けます。
「ちょいと邪魔をするよ」
「さアさアどうぞ。丁度一本つけたところで、何んにもないが、つき合って下さい」
五郎八の赤い顔には、人の好い微笑がさざ波のように寄りました。心得顔にツと立って座蒲団を持って来たのは、三十五、六の年増、多分五郎八の女房でしょう。
「実は銭形の親分を案内して来たんだ。ちょいと親方にきき度いことがあるそうでな」
寅は身を引いて、平次に灯り先を譲りました。
「おや、銭形の親分さん。そうですかえ、こんな汚いところですが、まアどうぞ」
五郎八は立って迎えました。酒に焼けた胸をはだけて、湯上がりの少し早い浴衣で、薄寒そうに晩酌をやっていたらしい五郎八は、銭形平次と聴いてさすがに面食らった様子です。
「飛んだ邪魔をするね」