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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁
「食う支度は楽じゃありませんね、親分」
「女のようには行かないな、八」
苦笑いを交換して、空きっ腹へ一合お湿りをくれると、どうやらこうやら、人心地を取りもどします。
冷飯の湯漬け、サラサラと片づけて、
「この一件が落着したら、へそが眼をまわすほど御馳走することにして、今晩はこれで我慢してくれ」
「――」
そういわれると、八五郎はぬるい湯にむせて、ひどく咳き込んだりします。うっかりホロリとしたのを咳か何んかに紛らせそこねたのです。
「おや、変な音がしたじゃないか」
平次は聴き耳を立てました。
「野良犬が格子戸にさわったんですよ」
八五郎は泰然として未練がましく徳利をすすっております。
「いや、何にか投げ込んだ音だよ」
「見て来ましょう」
酔っていても八五郎は気軽でした。障子を開けて入口のあたりをのぞくと、
「あ、何にか投り込んだ奴がありますよ。手紙だ――小石を包んであるが」
少しあわてて、何やら白いものを拾って来ました。
「何んだ、いつもの女の筆跡だよ」
平次は半紙八つ折の手紙を猫板の上に拡げて読み下しましたが、事件の重大さに、さすがにハッと息を呑みます。
一万両は其方にやられたが、この返報はきっとするよ。