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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁
「どう? 八五郎親分」
「ない」
八五郎は呆然として首を起しました。
「それだけ、八さん」
「いや、お前を疑って済まなかった、――八五郎この通り」
真面目に首を垂れる八五郎、その首にしがみついたのは、張り切った情熱の吐け口を失って 少し取りのぼせたらしいお栄でした。
「たったそれだけ、八さん。それで済ませるつもり、――私は、私は口惜しい」
お栄の繊手が八五郎の首に絡むと、全身を投げかけるように、怨嗟とも歓喜とも、忿怒ともつかぬ声をあげるのです。
「親分ッ、大変ッ」
相変らず、路地の外からどなり込む八五郎です。翌る日の朝のこと。
「うるせえな、何処の牝猫が子を産んだというのだ」
貧乏臭い粉煙草、端居に朝のすがすがしさを楽しむ平次は、日ごろ『大変中毒』がしているので、自若として振り向いても見ません。
「牝猫じゃない、人間の女ですよ。滅法出来の良い二つの腕を見て来ましたよ」
「何をいってるんだ、それが大変だというのか」
「大変じゃありませんか。お栄の二の腕を見たんだから、こいつあたいしたものでしょう」
八五郎はすっかり有卦に入って、ニヤリニヤリと思い出し笑いをしているのです。