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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 頁
いや打ったつもりでも豊かで柔らかい女の肩を、ちょいと撫でたといった方が宜かったでしょう。
それでもお栄はがっくり膝を突きました。大輪の牡丹が、音もなく大地の上へ、ポトリと落ちて砕けたような風情です。
「あれ、本当に縛るつもり? 八五郎親分」
「当り前だ、十手は伊達に持っちゃいねエ」
「まア――そんなつもりだったの、八五郎親分。では一度縛られて上げるワ、八さんのお手柄になることなら――こう」
お栄はそのまま自分の手を後ろにまわして、神妙に八五郎の縄を待っているのです。
八五郎は暫らくキョトンとしました。引っ掻くとか飛びまわるとか、精一杯暴れてくれると縛る張合いもあるのですが――。
「でも、人殺しや押込みで縛られるのはいやねえ――お小姓の吉三さんに逢いたくて、家へ火をつけて縛られるなら、火あぶりになっても本望だけれど」
八五郎に縄を掛けられながら、身体をクネクネと揉んで、お栄はまたこんなことをいうのです。
「ぜいたくをいうな」
八五郎は精一杯冷酷無残な顔をして、奥歯を噛みしめながら、キリキリと縄尻を締めるのでした。
「あら、自棄な力ねえ。痛いじゃありませんか」
「我慢しろ」