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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁
剃りたての綺麗な頭に、燭台の灯がうつって、チラチラと動いた。
「実は僕は、さきほど病院を脱走した者でございまして……」と、僕は額に巻いた手拭を解きながら、身の上に関するすべての物語を喋り、そしてサイレン鳴る街の軒下で、一人の美しい島田髷に振袖の着物をきた女に庵主さんのことを教えられきた旨を告げたのだった。そして、
「……どうか、この暴逆なる手より、しばらくお匿まい下さいまし」
と、両手をついて頭を下げた。
「それはまことにお気の毒なお身の上」と尼僧は水のように静かに云った。「おもとめによりお匿まい申しましょうから、お気強く遊ばせ。しかしながら、わたくしにも迷惑のかかることゆえ、いかなることがありましょうとも、わが許しなくてはこの庵室より外に出ることは愚か、お顔を出すことも罷りなりませぬぞ」
「ああ、忝けのうございます。匿まって下さるのだったら、なんで庵主さまのおいいつけに背きましょうか、どうも有難うございます」
僕は感激のあまり、畳の上へほろほろ泪を落した。
尼僧は僕に一杯の白湯をふるまったあとで、
「ではもうお疲れでしょうから、お睡りなさいませ。但し他所から衾をとってくることもなりませぬからわたくしと一つ寝となりますが、よろしゅうございますか」