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かぎからぬけだしたおんな

鍵から抜け出した女

海野 十三

線上閱讀海野 十三《鍵から抜け出した女(かぎからぬけだしたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,188 字 · 43 頁

青空文庫

僕は蒲団の中で、ソッと手を伸ばしてみた。

「あッ、いけない――」

僕の身体の隣りには、たしかに人が寝たらしく生温かさが感じられた。――あの年若い尼僧は、たしかに僕の隣りに寝たに相違ない!

僕が起きあがると、秀蓮尼は経をやめた。朝の挨拶をすると、尼僧は、

「昨夜はよくお寝みになられたようでしたナ」

といって微かに笑った。

作ってくれた朝飯の膳に向いあったとき、僕は庵主が、昨夜陰影の強い灯影でみたよりも、更に年若いのに愕いた。よくは分らないけれど、ひょっとすると僕より一つ二つ年齢が下なのかもしれない。そしてまた昨夜見たよりも、遥かに目鼻立ちも整い美しい尼僧だった。

「どこかで見たような人だが……」

僕は円らな頭をもった秀蓮尼を眺めたのだったが、そこまで出かかっているくせに、どうも思い出せなかった。

朝のうちは秀蓮尼は外へ出たり、また庵へ入ったりなかなか忙しそうに見えた。僕は外を覗くことも許されなかったので、弥陀如来の前でゴロリと寝ころび、昨日に変わる吾が棲居のことやら、これから先、母のところを訪ねたものか、それともこのまま黄風島を脱けだしたものだろうかなどと、いろいろなことを考えくらした。