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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《鏡花短篇集 川村二郎編(くにさだえがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,644 字 · 40 頁
さて、局の石段を下りると、広々とした四辻に立った。
「さあ、何処へ行こう。」
何処へでも勝手に行くが可、また何処へも行かないでも可い。このまま、今度の帰省中転がってる従姉の家へ帰っても可いが、其処は今しがた出て来たばかり。すぐに取って返せば、忘れ物でもしたように思うであろう。……先祖代々の墓詣は昨日済ますし、久しぶりで見たかった公園もその帰りに廻る。約束の会は明日だし、好なものは晩に食べさせる、と従姉が言った。差当り何の用もない。何年にも幾日にも、こんな暢気な事は覚えぬ。おんぶするならしてくれ、で、些と他愛がないほど、のびのびとした心地。
気候は、と言うと、ほかほかが通り越した、これで赫と日が当ると、日中は早じりじりと来そうな頃が、近山曇りに薄りと雲が懸って、真綿を日光に干すような、ふっくりと軽い暖かさ。午頃の蔭もささぬ柳の葉に、ふわふわと柔い風が懸る。……その柳の下を、駈けて通る腕車も見えず、人通りはちらほらと、都で言えば朧夜を浮れ出したような状だけれども、この土地ではこれでも賑な町の分。城趾のあたり中空で鳶が鳴く、と丁ど今が春の鰯を焼く匂がする。