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に、さんば――じゅうに、さんば
鏡花短篇集
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《鏡花短篇集(に、さんば――じゅうに、さんば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,305 字 · 66 頁
「引掴んじゃ不可い、そっとそっと。」これが鶯か、かなりやだと、伝統的にも世間体にも、それ鳥籠をと、内にはないから買いに出る処だけれど、対手が、のりを舐める代もので、お安く扱われつけているのだから、台所の目笊でその南の縁へ先ず伏せた。――ところで、生捉って籠に入れると、一時と経たないうちに、すぐに薩摩芋を突ついたり、柿を吸ったりする、目白鳥のように早く人馴れをするのではない。雀の児は容易く餌につかぬと、祖母にも聞いて知っていたから、このまだ草にふらついて、飛べもしない、ひよわなものを、飢えさしてはならない。――きっと親雀が来て餌を飼おう。それには、縁では可恐がるだろう。……で、もとの飛石の上へ伏せ直した。
母鳥は直ぐに来て飛びついた。もう先刻から庭樹の間を、けたたましく鳴きながら、あっちへ飛び、こっちへ飛び、飛騒いでいたのであるから。
障子を開けたままで覗いているのに、仔の可愛さには、邪険な人間に対する恐怖も忘れて、目笊の周囲を二、三尺、はらはらくるくると廻って飛ぶ。ツツと笊の目へ嘴を入れたり、颯と引いて横に飛んだり、飛びながら上へ舞立ったり。そのたびに、笊の中の仔雀のあこがれようと言ったらない。