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ながやてんいちぼう

長屋天一坊

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《長屋天一坊(ながやてんいちぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 頁

青空文庫

繩屋吾助は、奔走し始めたわけである。彼は故郷の佐野へ数回も手紙を出し、その地の寺の住職に対し、やはり書簡を以て交渉し、住職の返信によって幾許かの金銭を送り、結果として数枚綴った過去帳の写しを受取った。……その写しに付けて、住職はなお寺の窮状を訴え、

――御送金だけの調査では別記の如くであるが、なお調査を進めれば、或いは貴殿の先祖はかの有名なる佐野源左衛門常世ということになるか計り知れぬ、それには調査料として金二十枚御送付ありたい。また金五十枚御送付あれば平将門公の御直裔なることが判明するかとも愚考される。なおまたこれらに就いて系図が入用なるばあいは、系図書き師への染筆料として前者は金五枚、後者は金十五枚でお役に立つであろう。(注)右の価格はごく格安に願ったものであることを、特に付記する次第。

こういう意味のことを書いて来た。吾助はさすが繩屋として大成するだけあって、住職の狡猾なる意図をすぐさま見抜き、同時にその文言の中から「系図書き師」なる者の存在を知って、にこっと笑ったということは、さすが商才というべきであろう。系図書き。それは「藩翰譜」の正統くらいを持って、諸家を回訪して、その家系を正し、補修し、そして最も多くのばあい各位の希望する系図を希望に応じて作製するを業とする者である。