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かいかのおっと

開化の良人

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《開化の良人(かいかのおっと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,438 字 · 32 頁

青空文庫

すると子爵は早くもその不安を覚ったと見えて、徐に頭を振りながら、

「しかし何もこう云ったからと云って、彼が私の留守中に故人になったと云う次第じゃありません。ただ、かれこれ一年ばかり経って、私が再び内地へ帰って見ると、三浦はやはり落ち着き払った、むしろ以前よりは幽鬱らしい人間になっていたと云うだけです。これは私があの新橋停車場でわざわざ迎えに出た彼と久闊の手を握り合った時、すでに私には気がついていた事でした。いや恐らくは気がついたと云うよりも、その冷静すぎるのが気になったとでもいうべきなのでしょう。実際その時私は彼の顔を見るが早いか、何よりも先に『どうした。体でも悪いのじゃないか。』と尋ねたほど、意外な感じに打たれました。が、彼は反って私の怪しむのを不審がりながら、彼ばかりでなく彼の細君も至極健康だと答えるのです。そう云われて見れば、成程一年ばかりの間に、いくら『愛のある結婚』をしたからと云って、急に彼の性情が変化する筈もないと思いましたから、それぎり私も別段気にとめないで、『じゃ光線のせいで顔色がよくないように見えたのだろう』と、笑って済ませてしまいました。