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かいかのおっと

開化の良人

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《開化の良人(かいかのおっと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,438 字 · 32 頁

青空文庫

そう云えばあの仏蘭西窓の外を塞いで、時々大きな白帆が通りすぎるのも、何となくもの珍しい心もちで眺めた覚えがありましたっけ。

「三浦は贅沢な暮しをしているといっても、同年輩の青年のように、新橋とか柳橋とか云う遊里に足を踏み入れる気色もなく、ただ、毎日この新築の書斎に閉じこもって、銀行家と云うよりは若隠居にでもふさわしそうな読書三昧に耽っていたのです。これは勿論一つには、彼の蒲柳の体質が一切の不摂生を許さなかったからもありましょうが、また一つには彼の性情が、どちらかと云うと唯物的な当時の風潮とは正反対に、人一倍純粋な理想的傾向を帯びていたので、自然と孤独に甘んじるような境涯に置かれてしまったのでしょう。実際模範的な開化の紳士だった三浦が、多少彼の時代と色彩を異にしていたのは、この理想的な性情だけで、ここへ来ると彼はむしろ、もう一時代前の政治的夢想家に似通っている所があったようです。

「その証拠は彼が私と二人で、ある日どこかの芝居でやっている神風連の狂言を見に行った時の話です。たしか大野鉄平の自害の場の幕がしまった後だったと思いますが、彼は突然私の方をふり向くと、『君は彼等に同情が出来るか。