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かのように

阿部一族・舞姫

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《阿部一族・舞姫(かのように)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 69,875 字 · 141 頁

青空文庫

「永年遠国に罷在候夫の為、貞節を尽候趣聞召され、厚き思召を以て褒美として銀十枚下し置かる」と云う口上であった。

今年の暮には、西丸にいた大納言家慶と有栖川職仁親王の女楽宮との婚儀などがあったので、頂戴物をする人数が例年よりも多かったが、宮重の隠居所の婆あさんに銀十枚を下さったのだけは、異数として世間に評判せられた。

これがために宮重の隠居所の翁媼二人は、一時江戸に名高くなった。爺いさんは元大番石川阿波守総恒組美濃部伊織と云って、宮重久右衛門の実兄である。婆あさんは伊織の妻るんと云って、外桜田の黒田家の奥に仕えて表使格になっていた女中である。るんが褒美を貰った時、夫伊織は七十二歳、るん自身は七十一歳であった。

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明和三年に大番頭になった石川阿波守総恒の組に、美濃部伊織と云う士があった。剣術は儕輩を抜いていて、手跡も好く和歌の嗜もあった。石川の邸は水道橋外で、今白山から来る電車が、お茶の水を降りて来る電車と行き逢う辺の角屋敷になっていた。しかし伊織は番町に住んでいたので、上役とは詰所で落ち合うのみであった。

石川が大番頭になった年の翌年の春、伊織の叔母婿で、やはり大番を勤めている山中藤右衛門と云うのが、丁度三十歳になる伊織に妻を世話をした。