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かのように

阿部一族・舞姫

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《阿部一族・舞姫(かのように)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 69,875 字 · 141 頁

青空文庫

そこでとにかく倅にそんな問題に深入をさせたくない。なろう事なら、倅の思想が他の方面に向くようにしたい。そう思うので、自分からは宗教問題の事などは決して言い出さない。そしてこの問題が倅の頭にどれだけの根を卸しているかとあやぶんで、窃に様子を覗うようにしているのである。

秀麿と父との対話が、ヨオロッパから帰って、もう一年にもなるのに、とかく対陣している両軍が、双方から斥候を出して、その斥候が敵の影を認める度に、遠方から射撃して還るように、はかばかしい衝突もせぬ代りに、平和に打ち明けることもなくているのは、こう云うわけである。

秀麿の銜えている葉巻の白い灰が、だいぶ長くなって持っていたのが、とうとう折れて、運動椅子に倚り掛かっている秀麿のチョッキの上に、細い鱗のような破片を留めて、絨緞の上に落ちて砕けた。今のように何もせずにいると、秀麿はいつも内には事業の圧迫と云うような物を受け、外には家庭の空気の或る緊張を覚えて、不快である。

秀麿は「又本を読むかな」と思った。兼ねて生涯の事業にしようと企てた本国の歴史を書くことは、どうも神話と歴史との限界をはっきりさせずには手が著けられない。