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がん

雁

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《雁(がん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 頁

青空文庫

所もなくなっていた。お玉はそれをひどくじれったく思った。

末造が来ていても、箱火鉢を中に置いて、向き合って話をしている間に、これが岡田さんだったらと思う。最初はそう思う度に、自分で自分の横着を責めていたが、次第に平気で岡田の事ばかり思いつつも、話の調子を合せているようになった。それから末造の自由になっていて、目を瞑って岡田の事を思うようになった。折々は夢の中で岡田と一しょになる。煩わしい順序も運びもなく一しょになる。そして「ああ、嬉しい」と思うとたんに、相手が岡田ではなくて末造になっている。はっと驚いて目を醒まして、それから神経が興奮して寐られぬので、じれて泣くこともある。

いつの間にか十一月になった。小春日和が続いて、窓を開けて置いても目立たぬので、お玉は又岡田の顔を毎日のように見ることが出来た。これまで薄ら寒い雨の日などが続いて、二三日も岡田の顔の見られぬことがあると、お玉は塞いでいた。それでも飽くまで素直な性なので、梅に無理を言って迷惑させるような事はない。ましてや末造に不機嫌な顔を見せなんぞはしない。唯そんな時は箱火鉢の縁に肘を衝いて、ぼんやりして黙っているので、梅が「どこかお悪いのですか」