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あめ
雨
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《雨(あめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 頁
火の気を消してしまった火鉢の上に手をかざして、張子の虎の様に抜衣紋をした白い首をぬっと突き出し、じゞむさい恰好でぺたり坐っているところを起たされ、人力車に乗せられた。見知らぬ人が前の車にお君はその次に、豹一はいちばん後の車、一人前に車の上にちょこんと収りかえった姿を車夫はひねてると思ったのか、ぼん/\落ちんようにしっかり掴ってなはれや。その声にお君はちらりと振り向いた。もう日が暮れていた。落てへんわい、と豹一はわざとふざけていい、その声が黄昏の中に消えて行くのを少年の感傷できいていた。ふわりと体が浮いて、人力車はかけ出した。一瞬ごとに暗さのまして行くのが分る黄昏であった。
ひっそりとした寺がいくつも並んだ寺町を通る時、ぱっと暗闇に強い木の香がひらめいた。木犀であった。豹一は眩暈がした。既に初めてのった人力車に酔うていたのである。梶棒の先につけた提灯の光が車夫の手の静脈を太く浮び上がらしていた。尋常二年の眼が、提灯にかかれた「野瀬」の二字を判読しようとしていたが、血の気が頭からすっと引いて行くような胸苦しさで、困難であった。野瀬の家の前で降ろされ、地が揺れているのか体が揺れているのか分らぬ感じによろめき、家の中にはいると、げっとにがい水のようなものを吐いた。