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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《雪の上の霜(ゆきのうえのしも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 頁

青空文庫

それらは五本あったが、その五本を両手に持って、おじぎをし、あやまりながら、なおとびかかって来る相手を、右によけ左によけ、さらに大きな声をあげて、

「誰か来て下さい、どうかこの人たちを止めて下さい」と叫びたてた。強いほうが助けを求めているので、脇から見たらよほど面白い光景だったろう。事実、さっきからのようすを、一人の武士が笑いながら眺めていた。五十ちかい年配で、小柄ではあるが逞しい躯つきの、眼のするどい男だった。そのするどい眼で、伊兵衛の動作をじっと眺めていたが、もうよかろうという顔つきで、

「手を引け、下郎、控えろ」

こう叫びながら近よって来た。

「箕山城下の小室青岳だ、やめろ」

よほど名の知れた人物なのだろう、小室青岳と聞いて、かれらはさっととびしさった。三人ばかりはぶっ倒れて、死ぬほど苦しげに喘いでいたが、これらも吃驚してはね起きた。

「おれはあの茶屋にいて、きさまたちの相談を聞いたのであとを追って来た」青岳はきめつけるように云った、「――そしてすっかり見ていたが、この方は土地の習慣を知らず、なお病気の母親を抱えて難渋しておる、済まなかったと詫びておられる、それを罵り辱しめ、多数をたのんで打ちかかるとは、無法千万なやつらだ」