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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《雪の上の霜(ゆきのうえのしも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 頁

青空文庫

「これだけの腕があって、あのような稼ぎをなさるには、なにか仔細があることでしょう、しかし私にはそんなことはどうでもよい」青岳はこう云った、「――もしよろしかったら、と申すよりぜひ、この道場で稽古をつけて頂きたいのだが」

「はあ、至って不調法ですが、もし私でお役に立ちますなら、どうか」

彼が承知すると、青岳は喜んで、月々の謝礼は金一枚でどうかと云った。思いがけない高額で、伊兵衛はわれ知らずほくほくしたが、そのあとがちょっと当惑した。

「昨日聞くと、病身の母御がおられるというが、滝沢はなにかと不便でもあろうし、当方でもなるべく道場に住込んで頂きたいので、こちらへお伴れしてはと思うのだが」

「はあそれは、そうしたいですが」

「幸いこの地内に空家がひと棟あります、よかったらそこを使って下すって結構です」

「それは有難いですが、その」

青岳は峠の騒ぎのときも、母親がおられると云った。なにかで感ちがいをしたらしい、だが伊兵衛には訂正ができなかった。自分が病母を抱えているものと信じて、青岳が親切にして呉れるのかもしれない。暫くはこのままにしておくほうが無難だ、と思ったからである。