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ゆきのよる

雪の夜

小林 多喜二

線上閱讀小林 多喜二《雪の夜(ゆきのよる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,967 字 · 31 頁

青空文庫

龍介はポケットに手をつっこんだままちょっと立ち止まった。その時汽笛が聞えた。それで彼はホッとした気持を感じた。彼は線路を越して歩きだした。後で踏切りの柵の降りる音がして、地響が聞えてきた。

龍介は図書館にいるTを訪ねてみようと思った。汽車がプラットフォームに入ってきた。振り返ってみると、停っている列車の後の二、三台が家並の端から見えた。彼はもどろうか、と瞬間思った。定期券を持っていたからこれから走って間に合うかもしれなかった。彼は二、三歩もどった。がそうしながらもあやふやな気があった。笛が鳴った。ガタンガタンという音が前方の方から順次に聞えてきて、列車が動きだした。そうなってしまうと、今度はハッキリ自家へ真直に帰らなかったことが、たまらなく悔いられた。取り返しのつかないことのように考えられた。龍介は停車場の前まで戻ってきてみた。待合室はガランとしていてストーヴが燃えていた。その前に、印も何も分らない半纒を着て、ところどころ切れて脛の出ている股引をはいた、赤黒い顔の男が立っていた。汚れた手拭を首にかけていた。龍介は今度は道をかえて、賑やかな通りへ出た。